藤目節夫のブログ

まちづくりに関することが多いですが、それ以外にも、徒然に思うことを書きます。

買い物難民を考える -賢い消費者から賢い生活者へ-

 近年、「買い物難民」という言葉をよく聞くようになってきた。地域にあった従来型の店舗の閉店により、自らの移動手段をもたない高齢者などが生活用品の購入に困るという社会問題、またはその被害を受けた人々を指す言葉である。中山間地域に多く見られる現象であるが、都市部においても一部見られる。

 買い物難民の発生理由としては、過疎化による購買力の減少、バスなどの移動手段の喪失などが指摘されているが、もっと本質的な問題があると思われる。それは、他ならぬ地域住民が地域の店を見棄てて、近隣都市の品揃えが豊富でより安い大型店を選択したことである。人々は1円でも安い買い物、換言すれば、「賢い消費者」を目指したと言えるであろう。手元不如意な身としては、あながち非難できない行動ではあるが、それが買い物難民発生の主要な素因の一つとなれば話は別である。

 賢い消費者を目指した結果として買い物難民が発生したとすれば、その行動は本当に1円安かったと言えるのであろうか。我々は「賢い消費者」である前に、自らの暮らしを守る「賢い生活者」である必要はなかったのか。

 近年、買い物難民対策として様々な提案がなされているが、本質的な対策は地域住民が自らのお店を、そして暮らしを守る努力をすることであろう。筆者の長年の研究フィールドである広島県旧高宮町川根地区では、撤退した農協の店を全戸が出資して地域唯一の店舗「万屋」を再興している。わずか600人の人口であっても、「自らの暮らしは自らが守る」という地域住民の決意と行動がこの奇跡を生んだのである。(愛媛新聞・平成26年2月27日「伊予弁」一部修正加筆)