藤目節夫のブログ

まちづくりに関することが多いですが、それ以外にも、徒然に思うことを書きます。

四国ヘンローズ

 私は故あって広島カープの熱烈なファンである。カープの本拠地が松山にあれば、仕事の合間に、いやたまには仕事などすっぽかして試合を見に行けるのにと常日頃思い、そしていつもそれは叶(かな)わぬ夢と悟るのである。なぜ叶わぬか、訳は簡単で、私が広島市ではなく松山市に住んでいるからである。

 斯く言うと、ついに気が狂(ふ)れたかとおっしゃるかもしれない。多少その気がなくもないが、 私が言わんとしたいのは、松山市あるいは松山都市圏ほどの入口規模では、プロ野球の球団を持つことが極めて困難だということである。

 プロ野球だけではない。八百屋にしろ魚屋にしろ、はたまた歯医者にしろ眼医者にしろ、その経営が成り立つためには一定数以上の人口が必要なのである。これを人口閾(いき)値という。もちろん八百屋の人口闘値と歯医者のそれとは異なるが、いかなる機能であれ、地域の人ロがその人口閾値に達しない場合にはその機能は存在しえない。人口闘値に達しない場合はどうするか。その機能を諦めるか、遠く他の地へ出かけてその機能を享受するしかない。

 本四連絡橋今治尾道ルートの大三島橋は既に完成し、現在、伯方・大島大橋が建設中である。この架橋が完成すると、越智郡の三島五町が陸続きとなる。陸続きとなって何が変わるか。島の面積が増えるわけでなし、人口が増えるわけでもない。

 すでに私が何を言いたいかお気づきであろう。三島五町三万人余が架橋で結ばれることによって、これまで各島単独では超えることのできなかった人口闘値を超えることができ るようになったのである。交通の発達は地域間をより短時間で結合する。それは視点を変えると、これまで人口闘値に達しないため存在しえなかった機能の新たな誕生を意味する。

 地理的スケールを四国に拡大してみよう。現時点では四県を一緒にした人口を考えても無駄である。しかし四県が高速道路で相互に結合された暁には、理論的には四百万人余の 人口闘値をもつ機能の成立も可能である。念願のカープもこれで成り立つ。もっともカープは広島が手放さないであろうから新しい球団の誕生となる。さしずめ名前は四国ヘンローーズ(遍路)が良かろうと思うがいかがであろうか。

 四国になくて九州にあるものの一つに国際空港がある。それも四空港ある。九州はシリコン・アイランドと呼ばれ日本でも有数のIC生産地である。製品の一部は東南アジアに輸出される。もし九州に国際空港がなければ、製品は一度東京か大阪へ運ばれて通関手続きをしなければならない。国際空港の意義がおわかりであろう。わが四国でも四百万人余の人ロが一体となれば国際空港の一つぐらいは可能である。

 先日、四全総に対するヒアリングが高松であり、四県知事が参加してそれぞれ要望を述べたという。新聞で見る限りその要望は各県で異なり、入口闘値四百万人に対する配慮は極めて少ない印象を受けた。

 古事記に曰く、「次に伊予之二名島を生み給ひき。此の島は身一つにして面四つ有り」。未だに四国には四つの顔がある。(出所:愛媛新聞・四季録、昭和62年2月3日)

 

跋語

 約30年前に愛媛新聞の「四季録」に半年間、毎週書いたエッセーの一つです。今改めて読んでみると、論旨の通らない箇所や視点の未熟さが散見されますが、まあそれも若いという証拠の一つと思い、手を加えずにそのまま掲載しています。

 未だに四国ヘンローズは誕生していませんが、その分カープが頑張ってくれてます。それにしても、今年のカープは強かったですね。カープ万歳!